Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

人権侵害の疑いがあるヘッドハンティングを断りました。

ヘッドハンティングから2週間が過ぎた。今日がタイムリミット。結論からいうとヘッドをハントさせないことにした。これから正式に断りを入れるつもりだ。今の職場におおむね満足しているというのが大きいけれどもヘッドハンティングのやり方が非人間的かつ人権侵害の疑いがあり容認できないものであったことが一番の要因。

前の会社でほぼ僕と同時期に辞めた同僚Tから「力を貸してくれないか」と連絡を受けたのは確か今月の初め。場末の安居酒屋で待ち合わせをしたTは今も僕と同じ食品業界にいるので「力を貸してくれ」はすなわち相応のお金と立場を約束された素敵なハンティングだと僕は予想していた。

「頼む。力を貸してくれ。今のお前の力が100パーセント活かせるはずだ」予想通りの素敵なハンティング。100パーは僕を買いかぶりすぎではないかな。そんなにうまくいかないよー。それに今の会社への愛着と恩義もあるしね。お金じゃ動かないよ。ビールうまー。中ジョッキ追加。

「給料はこれだけ出す。ポストは営業開発部長。年齢構成の歪んだ営業開発部隊を再建できる長く業界にいて熟知している人間をウチの会社は探している」提示された金額は今よりもずっと好条件。僕は団塊ジュニアの氷河期世代。生まれて初めて売り手市場を実感。イヤらしい話になるけれど人間の気持ちを動かすのはお金だよね。働くことはお金じゃないみたいな偽善者には僕はなれない。ところで何て会社だっけ。中ジョッキ追加。

「待て待て。俺たち世代の管理職は会社の看板より仕事の中身と条件だろ?違うか。正直に話をさせてもらうがこれだけの金額を提示するのだから普通の営業開発部長の仕事だけで済むとはまさか思ってないよな」なんだ。見くびっているのか。びびっていると思っているのか。僕はプロだ。金さえ積まれればやれることは人並みにやるプロだ。何をさせるつもりなのか言えよ。言ってくれよ。ビールにがー。中ジョッキ追加。

「会社に必要な人間と不要な人間を見極めてくれ。必要な人間は鍛え直して一人前に育ててくれ。不要な人間は…あの会社にいたお前ならわかるよな」またリストラ役かよー。もう人の人生にタッチしたくないよー。あれから数年。いまだに送り主不明の不気味な年賀状が送りつけられている。多少お金を積まれてもリストラ役をするのは割にあわないけれど相応のお金を積まれたら割にあってしまうなあ。所詮他人の人生だしね。やってやっか。中ジョッキ追加。

「夏に子供が生まれたんだ。俺は50才。子供が成人するまで20年ある。汚い話になるけれども子供のために少しでも多くお金が欲しい」とつぜん何を言い出すんだ?。50才でオッキッキするモンキーな精力がある俺すごくないという自慢か。ふはー。大変だよね。あと20年働くなんて考えたくもない。そろそろ本題にいこうぜ相棒。中ジョッキ追加。

「ありがとう。実は今、俺この会社でお世話になっているんだ。驚いたろ。呆れただろ。前のあのクソ会社にこの4月から戻ったんだ。なんでかって。カネが良かったからだよ。子供カミさんの腹の中にいたからね。稼げればいいと思ったんだ。だが今は後悔している。あの会社はクソだ。だから後任の人間を見つけたらソッコー辞めるつもりでいる」アホか。喧嘩別れした元の会社に戻るのもアホだが半年で辞めるのはもっとアホだ。僕を後任に置こうとするのは超アホだ。ありえない。そもそも辞めたいならひとりでさっさと辞めればいいじゃないか。何が後任だよ。人を巻き込むなクソバカデべソ。中ジョッキ追加ふたつ追加。

「わかる。俺だってバカじゃない。実は人材紹介キャンペーンをやっている。退職する際に同等の能力を持った後任を会社に紹介すれば紹介料をもらえるんだ。それがバカに出来ない金額でさ。知っているとおり退職金がない会社だから貰えるものは貰っておきたいじゃないか」ふざけんなよ。ただの生贄じゃねーか。なんで生贄制度が令和の時代に爆誕しているんだよ。よくもまあ。人権どこいった。そもそもなぜ僕がたいして親しくもない横浜市港北区在住50才男性会社員のために生贄にならなきゃいけないんだよ。中ジョッキ追加。

「そういうと思ったよ。誤解しているようだけどお前をヘッドハンティングするつもりないよ。最初から力を貸してくれと言っているだろ。お前みたいな面倒な人間は会社もお断りだ。ここからが本題だが今のお前の部下で辞めそうな奴いたら紹介してくれないか。そいつを生贄にしようじゃないか。これはビジネスだ。生贄紹介料の3割はお前にやる」みくびるな。僕はこの愚かな申し出を断ることにした。自分の部下をただで売るような真似はしたくない。取り分3割はあまりにも不公平。不気味年賀状が増えると考えたら8割は貰わないとあわない。商談不成立。僕は営業マン。仕事を断るのも営業の仕事だと信じている営業マンだ。(所要時間26分)

本を出しました。僕なりのサラリーマン生き方指南本です。→ぼくは会社員という生き方に絶望はしていない。ただ、今の職場にずっと……と考えると胃に穴があきそうになる。