Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

「業務自動化(RPA)で新型肺炎によるマスク不足を乗り切れますか?」と事務スタッフは言った。

新型肺炎の影響で全国的なマスク不足になっている。僕の勤めている会社は食品系で、マスクの使用頻度が高い業態ではあるけれども、幸いなことにマスク不足に陥っていない。消耗品の発注をしている事務スタッフのおかげだ。営業部門にいると彼らの仕事ぶりは数字でしか確認できないけれど、本当にありがたい。

先日、業務自動化へ向けた社内勉強会がおこなわれた。プロのレクチャーと自動化への課題についての話し合いだ。事務作業や単純作業の自動化はトップダウンの方針だがここ数か月膠着している。関連部署(事務スタッフ)の抵抗にあっている。雇用は守られるのか。仕事が奪われてしまうのではないのか。守ります。もっと創造的な仕事をしましょう。こんなやりとりが行われているのだ。

売上の集計等の単純作業は自動化してもっと楽に仕事をしましょう、というのが建前である。集計や入力上のヒューマンエラーがゼロになる、が本音。僕は「時代は令和、面倒は機械に任せて、今よりも創造的でクリエイディブで未来志向でNEOな人間らしい働き方をしませんか」と建前だけをアホのように事務スタッフに繰り返し話している。相手には全然響いていない。彼らから「私たちは頭を使わないで済む単純作業が好きです!」と言われた瞬間、僕は考えていた以上に越えなければならない山の高さに震えてしまった。「単純作業に落とし込むまでの私たちの苦労がわかりますか?」と言われたものの、その苦労をもういちど、とは言えず「複雑怪奇な業務をシンプルなカタチにするのは創造的ですね。そういった仕事をこれからも期待してますよ」とオブラートに包んだ返答をした。自動化は楽になるんじゃない。より頭をつかった仕事と結果が求められるから、キツくなるのだ。事務スタッフの彼らは仕事が奪われると主張しているが、今よりも仕事がキツくなることに薄々気づいているのだ。誰だって仕事がキツくなるのはイヤだからね。

「部長は、毎日違うことをしたいですか?新しいことに取り組みたいですか?」やりたくない。平穏に過ごしたいに決まっている。ただ、それでは生き残れないからやっているだけだ。「毎日、新しいことを考えて取り組むのは素晴らしいよ」という僕の言葉は決定的に説得力を欠いていた。「今、全国的にマスクが不足しています。我が社はじゅうぶんな数のマスクを確保しております。もし消耗品の発注業務を自動化していたら、新型肺炎によるマスク不足のような想定外の事態に対応できませんよ?」と事務スタッフは胸を張った。確かに。自動化で最適数・最小数を発注していたら向こう1年分のマスクを確保は出来なかった。食品系でマスクがなくなったら終わりだ。熟練の事務スタッフの凄み。「人間の仕事ぶりを甘くみないでください」と言われた。ぐうの音も出ないとはこのことだ。勉強会は終わった。

違和感があった。どうやって彼らは今回の新型肺炎とマスク不足を予測できたのか。未来からやってきたターミネーターの可能性も否定できないが、おかしい。僕はパソコンで部長クラスのみ閲覧可の資料をひらいた。消耗品の発注と在庫を確認。いつもは流してみているだけだが、よくよくみると、数字がおかしい。ほぼ発注量は毎月変わらないのだが、昨年の秋から突然2桁多く発注されていた。自動化ではありえないヒューマンエラーで秋から年内いっぱいまで2桁多く発注していた。当初の予定通り、昨年から、発注作業を自動化していたら、弱小の食品会社である弊社はマスク不足で業務に支障が出ていただろう。

僕がミスを指摘しても、彼らは「インフルの流行を予測して発注した」と主張するだろう。多すぎる量(2桁)はセーフティーファーストと主張するだけだろう。そして彼は言うのだ「これが長年の単純作業経験から生まれたノウハウです。機械には出来ませんよ」と。こうして我が社の業務自動化はマスクの山の下でまた一歩遠くなったのである。(所要時間23分)