Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

管理職はいらない。

過日、ビデオ会議の終わりに、部下Aから「部長!これからの日本は、管理職いらなくなりますね!」とストレートにいわれた。きっつー。どういう意図の発言かわかりかねるが、僕は少なからずキズついてしまった。日頃から「役職や肩書を気にせずに積極的に意見を言ってほしい」と言ってたくせに、彼のいう管理職が必ずしも僕を指しているわけではないというのに、情けない。

ここ最近、「新型コロナでなくなる仕事」という内容の、面白くない文章をネットでいくつも読んだ。どれもこれも予想がハズれても責任を取らないお気楽な文章で「こういう文章はお金をもらわないかぎり書くものか」と心に決めた。他人様の人生を馬鹿にしてるようで許せなかったのだ。だが、新型コロナ感染拡大にともなってテレワークに移行してみて僕は「管理職はなくなる」と無責任に予想するにいたった。正確には「管理職の数が少なくなる流れは止められない」である。平凡な管理職である僕にとって、この悲観的な予想は他人事ではない。

管理職は、ざっくりいえば、スタッフや業務を管理する役職で、上司とほぼ同義である。なぜ上司と同義なのか。それは立場が上の人間のほうが管理しやすいからだ。僕が社会人になった頃の管理職には、一日中デスクに座って(当時はまだPCのないデスクが多かった)、本を読んだり、繋がれた電話に出たり、ときどき説教めいたことを話す以外は、何の仕事をしているのかさっぱりわからない人が多かった。居酒屋で「昔はバリバリにやっていた」という伝説は聞かされるが、それは「今バリバリやっていない」の証明でしかなかった。さらに、部下と一緒に動くタイプの管理職は「上司のくせに」と社内でちょっとバカにされているような雰囲気すらあった。

このように、古来、謎の武勇伝と肩書や役職といったもので管理職は守られてきた。だが近い将来、ごくごく一般的な中小企業で今も生き残っている、こういった管理職は滅びるだろう。テレワークが導入されて、武勇伝や肩書や役職それからルールギリギリの恫喝で誤魔化してきた真の管理能力が浮き彫りになってしまったからだ。たとえば僕は営業開発部の部長で、営業という仕事しか知らない人間であるが、各種営業支援ソフトウェア等を使ってしまえば、管理業務に経験や能力はいらない。経験や能力はかえって邪魔になるかもしれない。プロジェクトの進捗状況や顧客の管理も余裕。はっきりいってしまえば管理という仕事だけなら誰でも出来る。しかも楽に。部署ごとに管理職を置く必要もないほど楽だろう。管理するだけの管理職なら今の人数は要らない。そういう人たちは、そのほとんどは年配だが、今、ハンコを持って迷惑な自己アッピールに必死だ。

一方、ソフトウェアがまだまだ弱いなと思うのは、次の一手、戦略を考え出すことだ。過去のデータから訪問時期や企画案候補を弾き出してはくれるが、意外性というか、面白みがなく、はっきりいって使えない。入力している顧客データがデジタルである以上仕方ないのかもしれない。スタッフのモチベーションを保つための仕組みもいまいちで、まだまだ管理職が上司というペルソナをかぶって喝を入れる必要があると感じている。これからの管理職は、管理(マネジメント)よりも戦略の立案やモチベータ―としての役割が強くなるのは間違いない。同時に、新しい仕事を発明していくクリエーターでなければならない。

つまりスタッフを管理することで評価されていた部分の大半が機械化自動化されてしまうので、それを補填するために、管理職もこれまで以上に創造的な仕事をして、かつ評価を受けなければならなくなる。管理も、適材適所で前例にとらわれないスピード感のある人材登用といった攻撃的な管理が求められる。ただ、日報を確認して電話するだけの受け身の管理をしているだけでは部下の人たちに「あの人仕事していないよね」と笑われてしまう。テレワークを導入しない企業の管理職も遅かれ早かれ同じ状況になるだろう。

ひとことでいえば、部長席に座って管理をしているだけの管理職はもういらない。告白しよう。僕は座っているだけの謎上司の滅亡に寂しさを覚えている。かつてのアホ上司のように何もせずに給料をもらえるような人間になりたいと願い、そういう将来のために頑張ってきた自分がいる。だが、何の仕事をしているかわからない謎上司の居場所がなくなって、成果を出し続けて仕事が明確な上司が部長席に座る状態は、真面目に働いている多くの人たちにとっては、いい傾向だろう。このまま加速していってもらいたい。

今勤めている会社に、ハンコ出社している上級管理職がいる。僕には彼らがハンコに固執するあまり、失っているものに気づいていないように見える。失っているものが、「仕事は何のためにやるか」「いかに効率的に進めるか」「ウチのような小さな会社が生き残るためには」といった、彼らが会議で口癖のように言っていることなのだから笑える。僕は、管理職の端くれとして生き残りたい。そのためには時代遅れのハンコみたいな管理職にならないよう、真面目に働くしかない。

求められるのは、特別な才能ではない。難しいこともない。毎日少しずつでもいいから、新しいものを生み出すよう努力すること。昨日と同じことをするなら昨日より容易に進めるよう改良すること。それらを心がけながら日々働いていれば、おのずと道はひらけるのではないか、と僕はポジティブに考えている。礎になるのは熱い気持ちだ。まずは、暑苦しいくらいの気持ちをもって「管理職はいらない」と言い切った部下Aをつかまえて「その管理職に僕は含まれるのかな?あ~ん?」と詰問することからはじめたい。こんな管理職は滅びなければならない。そう頭ではわかってはいるけれども心が…。(所要時間31分)