Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

「書ききる」経験だけが、書ける人間をつくる(12/16発売『神・文章術』より)

書きたい気持ちを優先して書いてみよう。雑音はシャットアウトして書ききる。しんどい。迷いもある。納得できない。それでも書き進めていき、終わらせる。「書ききった」という小さな自信と「うまく書けなかった」という悔しい気持ちは、書ききったからこそ得られるものだ。

どれほど拙い文章でも、書かれなかった文章よりは、何万倍もマシである。「書ききる」という経験が、書ける人間をつくる。凄く面白そうな企画の映画で、そのまま企画倒れになってしまった幻の映画よりも、ポテチとコーラで2時間潰せるだけの劇場未公開映画のほうが、価値はある。僕の記憶に残っているのは、レンタルビデオで借りた出来の悪いC級ゾンビ映画ばかりだ。「なぜこんなくだらない映画を撮り切ったのだろう」と笑いのなかで疑問に思ったものだが、今、振り返れば、ゾンビたちは最後まで作り切ることの大切さを僕に教えてくれていたのだと思えてならない。 企画で頓挫した映画には、価値はない。作りきったものだけが歴史に残るのだ。それがゾンビ映画のようにくだらないものだとしても。

    テクニックに走るのは、現代社会の余裕のなさに要因がある。直接、成功や成果に結びつかない失敗や回り道を受け入れない風潮がある。失敗や回り道をするものなら、要領の悪い人間認定をされてしまう世の中だ。近道を選んでしまう傾向になる。仕事や研究でも、成果や結果、成功ばかりがフォーカスされている。成功者の人生をコピーするような生き方が流行っている。

先人のつくった近道を通れば楽だ。だが、それは自分の人生を生きているといえるだろうか。いえない。先人がつくった道をトレースすれば、成功者の劣化コピー人間になるだけだ。人生は誰かの人生をコピーするためにあるのではない。

だから、ときどきでいい。毎日の暮らしや仕事のなかで、10パーセントくらいは、あえてネットでやり方を調べずに自分の力でもがいて切り拓いてみよう。それだけでオリジナルな生き方になる。

自分で切り拓いた道こそが、自分にとって最速の道になりうる。すでにある近道はあなた自身にとっての近道かどうか、わからない。もがき苦しんで、試行錯誤と失敗の果てに見つけた道があなたにとっての本当の近道なのだ。

仕事や研究、スポーツでも自分でやってみない限り自分のモノにはならない。失敗や回り道を無駄と切り捨てない。その無駄を自分の力に変えるという意識と情熱があれば、無駄は無駄でなくなる

 

この記事は12月16日にKADOKAWAから発売される新著『神・文章術 圧倒的な世界観で多くの人を魅了する』からの先出しです。