Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

書くだけでゴミを宝に変えられる(12/16発売『神・文章術』より)

好き嫌いを抜きに、人や物を見るのは難しい。僕らには感情があるからだ。普通の感覚ならば、イヤな上司、面倒な会議、といった嫌いなものは極力、避けたいと考える。まして、嫌いなものに進んで興味を持つなどありえない。

僕が、「書くこと」で得たもののなかで最も大きなものは、「嫌いなものに興味を持てるようになったこと」だ。それまで「嫌いなもの」について自分からすすんで考えたことはなかった。「書くこと」などなおのこと。だが、書いてみると、そこは「自分にとっての未開のフィールド」だった。新鮮な発見と驚きに満ちた、愉快な体験になった。「好きなもの」よりも「嫌いなもの」について書くと、新しい発見がある。

「イヤなものや嫌いなものなど考えたくない」と考えてしまう状態は、思考停止である。何も得られない。僕は同じ部屋の空気を吸いたくないほど嫌いな上司について、なぜ吐き気がするほどイヤなのか、その理由を書き出していくことで、感覚ではなく理屈で、嫌いな理由を整理することができた。また、避けていた上司から、得るものもあった。

「性格が合わない」という理由だけで、成果を出している人から「秀でていること」を取り入れないことは大きなマイナスだと断言できる。

「嫌いなもの」を嫌いなままで終わらせない。僕らの人生は短い。触れられる資源は少ない。資源は有効に使おう。デスノートで嫌いな相手を突然死させるより、自分にとって利のある行動をさせてから死に至らせるほうが、役に立つだろう?

好き嫌いでものを見ない。感情を切り離して対象と向き合う。これらは書くという行為によって誰でも容易にできる。そして、これまで興味のもてなかったものと向き合うスタンスができてくる。生きていれば、嫌いなものや、苦手なものにはたくさん出会う。実際、好きなものよりも多く出会う(僕がそうだ)。

人生は短い。特に成長できる若さを持っている時期は、本当に短い。その短い時間を実のあるものにするには、目の前にあるものから、どれだけのものを吸収できるかにかかっている。好き嫌いをしていると、栄養は偏ってしまう。

目の前にスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツはいない。いるのはクソ上司と理解不能な若手社員。日々の仕事。タスクとノルマ。満員電車の通勤。疲労困憊のなかでの家族サービス。増えていくばかりの白髪。弱くなる胃腸。取り巻く環境に大きな差はない。感度をあげて、目の前にある環境の中から、どれだけのものを吸収できるかで、差が出てくる。いいかえれば、興味のないものや嫌いなものから、目を背けていると、吸収する機会を失ってしまう。

僕らの人生は、ゴミや死体がたくさん流れていて、たまに宝物が流れてくる、メコン川のようなものだ。その川を前に「ああ、なんて冴えない人生……」と諦めずに、次のようにとらえよう。

好きなものや興味のあるものについて、僕らは専門家である。無意識のうちに、日常的に研究している。これまで興味を持っていなかった分野についてはについて、僕らはビギナーである。手をつけるだけで、ビギナーズラックで新しい情報をゲットできるチャンスがある。

「意味がない」「興味をもてない」と切り捨てていたものにこそ、まだ見ぬ宝物がある。

そう見方を変えると、興味を持てずにいたものに価値を見出せる。僕は、書くようになって「文章の素材を集めたい」という意識を持つようになってから、自分の前にあるものすべてから、吸収できるようになった。クソ上司やアホみたいな会社組織のしきたりからでも、学べることはあった。ゴミを宝に変えることができるかどうかは自分次第である。そして「書く」という行為を積み重ねていけば、アンテナの感度は無限に上げられる

 

この記事は12月16日にKADOKAWAから発売される僕の新著『神・文章術  圧倒的な世界観で多くの人を魅了する 』からの先出しです。Amazonで予約できるようになりました。https://www.amazon.co.jp/dp/4046055456/