Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

自分だけの文章を書くために必要なたった一つのコツ(12/16発売『神・文章術』より)

「何も準備なく書ける人」は超人である。天才である。プロの書き手さんのなかには、技術で記事を書いている人がいる。テクニックで文章を書けるのは選ばれし者、スーパーマンである。本書で紹介している方法は、スーパーマンでなくても書けるようになる方法だ。積み重ねがベースなので、技術や才能に左右されない。だから、多少時間はかかるけれども、誰でも確実に、そして着実に、成長を実感しながら書けるようになる。今、僕がこうして14万字ほどの本を執筆しているように。だから誰にでもできる。

技術は偉大である。三島由紀夫さんの圧倒的技巧の文章は永遠の憧れだ。憧れはモチベーションになる。「三島にはなれない」という絶望ではなく、「三島のような文章を書けるようになりたい」という希望の物語をつくって、そこに少しずつ寄せていくようにしよう。文章に必要なものは、技術や才能ではなく、準備である。準備とは自分の人生と向き合うことである。技術に優劣はあるが、積み重ねてきた人生に優劣はない。だから、人生が豊かになれば誰でも書けるようになるし、書くことによって人生の豊かさに気付く、つまりさらに人生が豊かになっていく。

ネット上にある、文章の書き方、文章術、ライティングについて書かれた記事を読んだ。文章力の向上。読者を魅了するネタ探し。独自の文体をどうつくるか。文章にこめるメッセージ。取材や調査の重要性。どれも見栄えの良い文章、評価を得られる文章のための準備だった。書くものをつくる方法はなかった。車にたとえると、書くものがガソリンで、書きたいという気持ちがエンジンである。ボディやサスペンションにどれだけいいものを使っていても、要のガソリンとエンジンがなければ車は動かない。

「どう書けばいいのか」という「書く方法」にフォーカスした準備をするのは、他人の目を気にする意識が根底にあるからだ。他人の目を気にしすぎると、「こんなことを書いてもいいのだろうか」「下手くそすぎやしないか」という心理的なリミッターがかかる。その状態に陥れば、文章テクニックや用意周到な取材も役には立たない。どう書くかより、何を書くか。書くものをつくることに集中しよう。「どう書くかの沼」にハマらないようにしよう。

自分だけの文章は、丁寧に人生を観察し、自分の言葉に落とし込んでいくことを続けていけば書ける。その過程で構築される世界観が助けてくれる。難しいことはない。一枚のメモ紙に書き捨てるだけでいい。イチロー選手はこんなことを言っていた。

「特別なことをするために特別なことをするのではない、特別なことをするために普段通り、当たり前のことをする」

特別なことをするためには、普段の行いが大事。本当にその通りだと思う。「普段通りの当たり前のこと」の積み重ねが大リーグ記録をつくるのだ。そして、普段を大事にすることは、心がけ次第で誰でもできることなのである。

この記事は12月16日にKADOKAWAから発売される僕の新著『圧倒的な世界観で多くの人を魅了する 神・文章術』からの先出しです。Amazonで予約できるようになりました。https://www.amazon.co.jp/dp/4046055456/