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ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

元給食営業マンが「川崎市学校給食の使用食材産地偽装についてざっくり説明するよ。

川崎市の学校給食使用食材で産地偽装が行われた事件、加工した業者に警察の捜査が入って大きな問題になっている。

www3.nhk.or.jp

www.yomiuri.co.jp

業者は寿食品という給食会社。かつて神奈川県を主戦場に給食営業マンとして働いていたとき給食コンペで何十回も戦ってきた競合相手である。今は付き合いは切れているけど何人かの名刺は探せばあるはず。

少し前に起きたホーユーの学食問題とあわせて給食業界に対する不信感は増すのは避けられないが、今回のケースは少し異なるのでその違いがわかるように契約面から解説したい。

学校給食(主としてセンター方式)は地方自治体が発注者となり応札、落札した業者が業務を請け負うという構造になっている。わかりにくいのは、地方自治体が発注者となって数校から数十校を請け負う学校給食事業は、一般的に給食調理業務のみを受託する点だろう。食材調達は別なのだ。我々給食会社は地方自治体から提供される献立と食材を使用して調理業務全般を行う(運搬業務が含まれるケースもあり)。図参照。

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自治体サイドの栄養士の管理監督下に置かれるということ。なので業務請負の見積額は労務費と経費その他の合計となり、食材費は含まれない。ホーユーが受託していた小規模の給食案件は一契約あたり1校から多くて数校という比較的小規模であり食材を含めた契約になる。そこが今回とは違う。

「では今回問題となった食材はどうなっているの?」という話だ。先に述べたとおり自治体が調達した食材を使用するわけだが、実際には教育委員会的な組織が間に入って入札を行い契約締結をする。図にすると左が食材納品関係、右が給食調理関係。なぜこういう構造にしたのかは、自治体が調達した食材を100%投下するため以外に理由が思いつかないし、業界の先輩からはそう教わってきた。右の給食調理関係からは食材にタッチできない仕組みだ。

 

教育委員会が調達業務を行い、契約した食材納品会社から食材を納品すれば良いがそうはならない。川崎市の場合は川崎市(川崎市教育委員会)が発注者となり公益財団法人川崎市学校給食会が食材納品業務を落札している。落札額は2022年度で約54億円。

発注者 神奈川県 川崎市教育委員会 入札方式随意契約

落札会社 公益財団法人川崎市学校給食会

落札金額5,421,183,253円

入札日2022/03/25

リンク↓

nsearch.jp

さらに川崎市学校給食会が納品会社(黒光商事)と契約して黒光商事がさらに加工会社(寿食品)から納品されている。取引業者は届出られているはずだが、地方自治体と寿食品は直接契約関係にない。まとめた図がこれ。

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そんなんでチェックの目は行き届くだろうか。それに落札金額54億円超の食材費は(必要経費)を差し引いてどれだけ末端に届いているのだろう。きっと届いているのでしょう。仲介者がどれだけいてもね!(読者の判断に委ねるスタイル)。

なお、今回のケースでは使用された豚肉の使用量と金額が開示されている。

http://川崎市:学校給食で使用した豚肉を加工業者が外国産を国内産だと偽って(産地偽装)納入した件について (city.kawasaki.jp)

小学校は総食数51,074食、総使用量427キロ、666,120円、単価キロ当たり1,560円。中学校は総食数20,630食、総使用量238キロ、365,568円、単価キロ当たり1,536円。ざっくりまとめるとキロあたり1530円。100g当たり150円程度。買い物をしている人ならわかるけど最近の豚肉は特売で国産100グラム120〜130円くらい。末端の寿食品が学校給食に求められる国産ものを調達し、かつ利益を確保するためにはより安価な外国産に手を出さざるを得なかったのではないか(間違っているけど)。また、この150円程度の価格がどの時点での価格なのか資料でははっきりしない。末端に位置する寿食品に支払われている額ではないように見えるのは気のせいだろうか(つまりもっと安い額での調達が求められていた可能性がある)。

産地偽装は許されない犯罪だが、この契約の構造に問題があるように僕には思えるがいかがだろうか(読者に委ねるスタイル)。図を見れば問題がわかるよね。54億のうちどれだけがガチに食材費として使われたのだろうか。あれーおかしいなーて事態にならないことを心から祈ります(^^)

寿食品は10年前から偽装を続けていたらしい。契約の構造から見えてこなくても、納品された食材をしっかりチェックしていればもっと早く不正を見つけることが出来たはず。もちろん川崎市はチェック業務を委託している(令和5年度は228千円)。専門の検査会社は株式会社同位体研究所。年一回産地判別検査を実施しているのに10年前からの偽装を見抜けないのもなんだかな。と思いました。給食会社の立場で言わせていただくと、多くの自治体が学校給食の調理業務委託については再委託を禁じている一方で(先ほどの図の右側)、食材調達業務(図の左側)については再委託ではないけれども実質再委託のようなフリーダムなことが行われているあたりに今回の原因があると思うわけです。(所要時間62分)