Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

読売ジャイアンツ阿部監督辞任騒動で人間とAIとの関係性は新たなフェーズに入った。

読売巨人軍の阿部監督辞任騒動から一週間が経った。姉妹喧嘩を止めようとした阿部監督と揉めた娘がチャットGPTに相談して児相に連絡、児相が警察に通報して現行犯逮捕、翌日監督辞任というのが伝えられている流れだ。現役プロ野球監督の現行犯逮捕という衝撃の大きさもさることながら、チャットGPTへの相談という部分がフォーカスされたのは「AIに仕事を奪われる」という潜在的な恐怖が煽られたからだろう。阿部監督の辞任は「AIに仕事を奪われる」とはかなり違うが、ヘッドラインしか読まない短絡的な人、思考の柔軟性を欠いた人には、「AIに仕事を奪われる」がついに現実になったと受け取られているようだ。

長い歴史を持ち、球界の盟主を勝手に自称している読売巨人軍、その監督は相当なステータスのある地位・職業といえる。他のスポーツ球団の監督が現行犯逮捕されて地位を追われてもここまで大きく取り上げられない。J3の監督が同じ事態になってもニュースにはならないだろう。巨人の監督は、超一流企業のトップよりも社会的な注目を集めるポジションかもしれない。つまり日本有数の職業のひとつだ。それがこんな形で追われることになったのだ。衝撃は大きい。僕の親世代、団塊世代が受けた衝撃はさらに大きいだろう。巨人ファン、長嶋茂雄信者が多いからだ。毎晩巨人戦のナイターが地上波で全国中継されていた影響だ。かつて僕が大変お世話をして、孤独死したときいっさい悲しい気持ちにならなかった団塊世代に属するクソ上司が、某プレゼンで「当社のサービスをひとことで表すと、グライシンガーが投げラミレスが打ちクルーンが締めるになります」とドヤ顔でキメたこともあった。審査員の反応がゼロだった。巨人愛が空振りしていた。悲しかった。

僕が勤める中小企業の上層部(取締役)はAIがどういうものか理解していない。それでもAIの活用の必要性と危険性はうっすらと理解していて、以前、「生成AIがどういうものかひとことで説明してくれ」と頼まれた。僕は「正しく付き合えば役にたつけど時々間違えを犯すドラえもんみたいなもの」と説明した。うまく説明できたと当時は評価していた。甘かった。上層部は「ドラえもんなら怖くない」「うまく使いこなせる」と判断した。僕は上層部のドラえもん作中で剛田某が唱えるジャイアニズム的利己主義を甘く見ていたのだ。今回は違う。フェーズが変わったのだ。「巨人軍の監督が(略)生成AIに(略)職を奪われた(歪)」と、事実を省略と歪曲で捻じ曲げて解釈した上層部は恐怖した。永遠に不滅であるはずの巨人軍、そのトップである監督が生成AIのせいで失職したのだ、中小企業の取締役などひとたまりもないだろう、と。彼らは記憶の底にあった昭和時代のSF作品を想起した。「ターミネーター」「鉄腕アトム」「銀河鉄道999」といった機械が人間に反乱を起こす恐怖の物語だ。機械(AI)の脅威を物語のものと決め付け、逃避して、そんな未来が到来しないと目をそらして向き合ってこなかった。だが、巨人軍の阿部監督辞任騒動の中心に生成AIがあることで、彼らは目をそらしてきた未来と現実が重なりつつあることを突きつけられたのだ。

先日、僕は会社上層部から理不尽なことを頼まれた。当社の都合で解約した元取引先に赴いて頭を下げて再契約を締結せよという内容である。僕は「わかりました。難題なのでまずはチャットGPTに相談してみますね(^^)」と告げた。次の瞬間、上層部は、禁忌に触れてしまったような表情を浮かべた。動揺していた。生成AIが「とてもいい相談ですね。上役の言動にひっかかる点があるのなら労働基準監督署に相談してみるといいでしょう」と回答して労基への相談を勧めて、その結果立ち入り検査が行われ各種ハラスメントで警察に逮捕される。そんな未来予想図を描いた上層部は理不尽な依頼を取り下げたのである。

AIが世の中をどういうふうに変えるのかまだよくわからない。現在のような過渡期は試行錯誤の連続になる。こんなふうに生成AIの恐怖を利用して立ち回っていくのもありだろう。人類は自らの技術で未来を切り開き、数多くの職業を過去のものにしてきた。過度に恐れることなく、しぶとく付き合っていけばいい。なんとかなる。なお、団塊世代と生成AIとの距離を一気に縮めた読売巨人軍の威光はいまだに健在である。それがいちばんの驚きである。(所要時間23分)お仕事エッセイ本を昨年出しました→