Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

お姉さんを紹介してくれたらお代はいらないぜ


 橙の空を見上げては日が長くなったなあ。桜が咲き誇る様を眺めては春本番だなあ。ぼんやりそんなことを思いながら家路を急ぐ。公園の前に差し掛かったとき子供たちの声が聞こえた。僕を呼んでいる声だ。


 大多数の推薦により地元青年会の秘書代理という要職に就いてもうすぐ二年になる。その話を聞いたときは正直いって自分の能力と人望を恨めしく思ったけれど、「大いなる力には、大いなる責任が伴う」というベンおじさんの遺言をすぐに思い出し「これからは『この町最高』の精神で秘書代理道に精進致します」と快諾。与えられた仕事は、老人ホームのイベントでフランクフルトを焼いたり、盆踊りでアラレちゃん音頭や東京音頭のテープを流す合間にかき氷を作ったりすることなど。紙コップに入った差し入れのビールを飲みながら「少佐必殺!ウルトラーマスタード!ウンコ形!」「少佐のはもっと大きいゾ。フランクフルト!」「少佐特製!サンポールシロップカキ氷!メロン味!」という調子でフランクフルトやカキ氷を子供たちに手渡したのはなかなか楽しい思い出だ。「スゲー!」「ウンコー!」子供たちが喜んでいる後ろで顔をしかめる大人もいたような気がするが楽しい思い出が汚れるので記憶から削除した。声の主はたぶんそのときの子供たちだ。


 僕を呼ぶ声。鉄棒の周りに洒落た自転車に跨った子供が3人いた。「少佐−!」「少佐ー!」と呼んでいる。缶ビールとつまみが入ったビニール袋を持った右手を突き上げて声に応じた。決めた。次の夏祭りでは「ウルトラスーパーミックスぶっかけカキ氷」をお見舞いしてやろう。社会通念上問題あるみたいだから声に出して言わないけど、歳の離れたお姉さんを連れてきてくれたらお代はいらないぜ。浴衣ガールだったら練乳もぶっかけてあげよう。男の約束だ。


 犬を連れているご婦人が不審そうな目で僕を見ているのに気付いた。子供たちよ。僕は悪い奴らは大体トモダチ。だから別にビビッているわけでも、周りの目を気にしているわけじゃないけど、大人が近くにいるときは「少佐」と呼ぶのはやめようね。いろいろあるんだ。大人って馬鹿でつまらない人ばかりだから。それと先日二階級特進して大佐になったので今後は大佐と呼ぶように。それでは夏祭りで僕と握手!