Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

ゲイングランドと永遠の子供たち

ニンテンドースイッチ版ゲイングランドを、難易度を落とし、コンティニューを駆使して、クリアした。

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30年かけてのクリアなので感慨もひとしおである。ゲイングランドは、『「ゲイングランド」を舞台に、閉じ込められた人々を救い暴走したコンピュータを停止させるため、20人の仲間が力を合わせて戦うタクティカルアクションシューティング』で、ルールは、敵を全滅させるか、仲間を全員脱出させればステージクリアとなるシンプルなもの。ゲイングランドがゲーセンに登場したとき、僕は中学3年生で、ボンクラな友達と夢中になって遊んだ記憶があるけれども、ヤンキーの多い、ビーバップで湘南爆走族な土地柄に、その戦略性が合わなかったのか、わりと早くゲーセンから姿を消してしまったのが残念でならない。幼稚園から中学校まで一緒だったT君は、ボンクラフレンズの有力メンバーで、放課後、一緒に電車に乗って隣町のゲームセンターに出向いていた間柄だった(僕の住んでいた町にはゲーセンがなかった)。残念ながら僕もTもゲイングランドをクリアすることは出来なかった。僕の場合は、ゲイングランドの難易度に打ちのめされて純粋に挫折しただけだが、Tはゲーム内の仲間を大事にしすぎて、先に進めなかったような記憶がある。ゲーム内で弾に当たったりして死ぬと、その場所で死体になって、後から来る仲間の救出を待つことが出来るのだが、Tはさっさと出口に向かえばいいところを死体の救出に向かってやられていた。ゲームのルールがわかっていないかのように無謀に弾幕へ突っ込んでいくTのプレイスタイルのアホさを僕は忘れることができない。もうひとつTについて印象に残っているのは、ゲーセンで徘徊するヤンキーたち、不良たちの恐怖に怯えつつ、僕は絡まれないよう目線を合わさないようにしながら「頭の悪い集団」と見下していたけれど、Tはそんなヤンキー不良軍団にどこか憧れを抱いているような言動が見られたことだ。「目を合わせるとバカがうつるぞー」僕は冗談まじりで助言したけれども、冗談ではなく、もっと、マジで、強く、しつこく、言っておくべきだった、と30年経った今も後悔している。今年の正月、実家のまわりを散歩しているときにTのお母さんに会った。2年前、僕が会社を辞めて昼間ブラブラしているときに偶然に会って以来である。ボンクラフレンドのTは、平成2年、高校2年生のとき、交通事故で他界した。僕と違う高校へ進学したTはヤンキーへの憧れからヤンキーもどきになった。股を開いて原チャリに乗る、プチ・ヤンキー化したTを見たのが最後で、その数週間後、Tはトラックに突っ込んでしまった。Tのお母さんに会うたび、僕は、懐かしさとともに後ろめたさを覚えてしまう。Tのお母さんは、会うといつも「立派になって!」と言ってくれる。自分の息子のやって来なかった未来の姿を、僕の向こうに見ているのがわかって胸がつまってしまう。僕は人の親ではないけれども、彼女の、親の悲しみや無念はわかる。僕は、「立派な大人」とはとてもいえない。けれども、立派に大人にはなっている。ただのオッサンになった僕でも、子供を喪った彼女からみれば十分に「立派」なのだ。Tのお母さんに会って、「フミコ君、立派、リッパー」と言われると、まだ、全然、立派な大人になれていない、後ろめたさを僕は覚えてしまうのだ。僕はぼんやりと当たり前に生きているオッサンで、当たり前のなかで忘れてしまいがちだけど、その当たり前が当たり前ではない奴らも大勢いるのだ。Tのお母さんに「中学生のとき、あいつと遊んだゲームで今、遊んでいるんすよ」と言うと、彼女は、あら、あの子の分まで頑張って、といって笑った。死んだ人間の分までゲームで遊ぶなんて、正直、ダサくて、ごめんだ。けれどもそのときの僕は、Tの分もやってやろうという気持ちになり、本気でゲイングランドの攻略に取り掛かった。ゲームの中で、仲間を犠牲にした。かつてのTのように仲間を救うために弾幕に飛び込んだ。難易度ダウン。コンティニュー、コンティニュー、コンティニューの果てにどうにかクリアした。幼稚な僕はときどきテレビゲームと自分の人生を重ねてしまう。Tはいつまでも仲間だ。人生というゲームで途中退席してしまったけれど、彼が僕の人生をいくらか楽しいものにしてくれたこと、僕の人生という名のゲームをクリアするのに必要なかけがいのない戦士であったこと、そういうのは忘れないようにしたい。そして、ただ立派に大人になっただけではなく、ゲイングランドで重宝した勇敢なソルジャーや火の球を放つ魔法戦士でなくてもいいから、凡人のままでいいから、少しでも立派な大人に近づけるようになりたい。ゲーム終盤の猛烈な弾幕をドット単位で回避しながら、僕は、そんなことを考えていた。(所要時間24分)

(※Tについては大人になれなかった子供たち - Everything you've ever Dreamedでも書いた)