Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

「『 007/ノー・タイム・トゥ・ダイ 』は面白かったよ」(ネタバレなし)

ずっと楽しみにしていた『 007/ノー・タイム・トゥ・ダイ 』がようやく劇場公開されたので、映画館で鑑賞しようとしたが奥様に止められた。理由は、緊急事態宣言が解除された直後に、映画館が入っている商業施設に出向いたら、浮かれた人たちが大挙して押し寄せている、人流がヤバいうえ、話題作ゆえ劇場内が過度の密状態が想定されるというものであった。なるほど、彼女の言い分は理解できた。彼女なりに僕の身を案じてくれているのだ。

一方で、納得できない部分もあった。なぜなら緊急事態宣言真っ最中の先月、彼女はご学友とショッピングモール内にある映画館で『科捜研の女/劇場版』を鑑賞していたからである。なぜ「科捜研の女」が許されて「007」が許されないのか。よくわからない。「科捜研の女」は比較的空いているからオッケーで、007は満席だからダメなのか。科捜研ガラガラ。それを指摘することは、テレビシリーズを録画して一話も欠かさず観ている、「科捜研の女」を愛してやまない彼女の人格を否定することに繋がりかねないので僕は口にしなかった。家庭内平和はすべてに優先するのだ。つか僕も「科捜研の女」劇場版を観たかった。僕だって、内藤剛志さん演じる土門刑事はテレビシリーズの予告で死ぬ死ぬ詐欺をやっているけれど劇場版でも死ぬ死ぬ詐欺なのか、榊マリコの別れた旦那は劇場版に登場するのか、確認したいことはたくさんあったのだ…。

そういえば、かつて彼女と映画館に行ったとき、二人の嗜好が激突して『ゼロ・グラビティ』と『永遠の0』を別々に鑑賞したこともあった。彼女のゼロは永遠で、僕のゼロはグラビティだった。そのときのことをいまだに根に持っているのだろう。執念深い人である。これが、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』劇場鑑賞を断念したいきさつである。納得できないことでも、「言われてみればそうだよねー」と言って誤魔化し誤魔化して僕らは生きているのである。

そして運命の10月8日金曜曜日。僕が仕事から帰宅するや否や奥様が「007映画館で観てきた」と言った。うん。なるほど。意味不明。あなた僕が観に行くことを断固拒否していませんでしたか。だのになぜ。そこまでして僕の身の安全を守りたいのか。マウントポジションを取りたいのか。大人な僕は冷静に「面白かった?」と言った。これは社交辞令である。社交辞令だから面白い内容は開示しなくていいのである。だが、彼女はそのあと小一時間かけて、僕が楽しみにしていた007のほぼすべてのストーリーとオモシロポイントとオチを語りつくした。「マドレーヌとボンドには●●●が●●るんだよー」「クライマックスでボンドが●●になってさー」「ラストはボンドが●●になって●●を●●んだよー。ボカーン。泣けちゃったー。ボンドは鬼滅の●●さんみたいだったよー」という調子でネタバレトークをガンガンされた。

話を聞かなければいいだろうという意見は現実を知らない人間の戯言である。奥様の言葉をないがしろにすることなど出来るワケがない。僕に出来るのは、そうだね、良かったね、楽しそうでなにより、とアホのように相槌を打つことのみ。男は奥様という女王陛下の007でなければならない。だが、これだけは言える。ときどき「『永遠のゼロ』超泣けたー」などと言ってセンスに疑問符をつけてしまうこともあるけれども、基本的には超辛口のウチの奥様が「面白かった」と評価していたので『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は面白い映画といって差し支えないだろう。僕はストレスで命が短くなっている。ガチでノー・タイム・トゥ・ダイになりそうだ。(所要時間21分)

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