Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

BCPはじめました。

BCP(Business Continuity Plan)。というのも、なんだか疲れるようになりました。取締本部長。あなたは、たしか、六十を過ぎたベテランビジネスマンのはずだ。話をしていても、変なものです。僕が今、この瞬間の、感染拡大にともなったBCPについてきわめて現実的な話をしているのに、あなたは「懐かしいなあ」「跡が残っているんだよなあ」と遠い目をして呟くのです。認知症では?僕は頭に思ったことが口をついて出てしまいそうになるのを抑えるのに必死でした。

あなたが口にするフレーズをかき集めて、わかりました。本部長、あなたはBCGについて話をされていたのですね。ツベルクリン反応。BCG接種。懐かしいものです。僕は小学校の集団接種がとても好きだった。女の子のまえで何でもない、という顔をすれば勇気の証明になると思っていたからだ。本部長。ろくろく話さえしなかった間柄でしたので、確証はなく、このような暴言を口にするのは許していただきたい。本部長、あなたは「BCP。あれのことか。勘違いしていた」と言っていた。けれども話の流れ、状況説明から勘違いの余地はなかったはずだ。本部長、あなたは、BCPが何を意味しているのか、知らなかった。あなたは、僕がBCPの意味と必要性について話をしているとき「危機下で中核事業を継続する計画…」「当たり前すぎて素通りしていた」と呟いていた。僕は正直少しムカついた。でも少しばかり時間がたった今は、ああした言い訳はいったいなんであったろうか、とこうして考えてみるようになった。そして、六十年という歳月が、そこそこ優秀であったかもしれないあなたを劣化させたのだ、と結論付けた。時間というのは、残酷なもののようです。

僕らが働いている食品会社は中小企業というカテゴリイに属しています。本部長、あなたは、感染、濃厚接触で欠員が出たら、人を派遣して埋めればいい、と言った。小さい我々の会社のどこにそんな余剰人員がいるのですか?現場のスタッフはひとりふたりと自宅待機になっている。止めることのできない中核事業にヒトモノカネのリソースを集中投入するBCPを発動するのは今なのです。それ以外の事業はどうなる?売上は下がるぞ、とあなたはBCP策定する前に話しつくした議論を蒸し返しましたね。認知症では?僕はまた思わず言ってしまいそうになった。いいから。早く。決裁を。本部長。私の言葉にテコでも動かなかったあなたが、社長、の名を口にした瞬間にハンコを押したとき、理屈よりも立場なのかと、僕は複雑な気持ちになったものです。

至急の問題は、病院の厨房のパートスタッフに欠員が出て、シフトを組むのが難しくなっていることでした。本部長、あなたは病院が年中無休で稼働していること、食事提供を絶対に止められないこと、を知りませんでしたね。BCPはタイミングがすべてです。ハンコ頂戴、ハンコ押さないのアホなやり取りで我々は時間を浪費してしまいました。病院の厨房の洗浄パートの欠員を埋める人員だけはついに見つからなかったのです。BCPは協力体制が不可欠です。他部署の人員をヘルプで回すわけですから。感染拡大前は、同じ会社だから協力するのが当たり前ですよ、何でも言ってください、といっていた同僚たちが頼りにならなかったのは悲しかった。彼らは異口同音で、ヘルプする気持ちはあるけれども、と前置きしては、キャンセルできないことはないけれどもキャンセルしたくない用事がある、などといって断ってきたのです。

今は1月21日午前11時です。営業部長である僕は、部下の代わりに、病院に電車で向かっているところです。午後から洗浄ヘルプ。夕食提供まで巨大なコンベア型洗浄機と格闘するのです。そして、電車シートに揺られながらスマホで大企業のしっかりしたBCPのニュースをみて、急にこうしたものが書きたくなったのです。(所要時間23分)

このような駄文が爆速で書けるようになる文章本を出しました。神・文章術 圧倒的な世界観で多くの人を魅了する