Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

僕のことをTwitter初心者だと思い込んでいる部下が退職します。

突然だが表題のツイッターマスターの部下が退職することになった。僕が自宅療養から復帰した日の夕方メールで告げられた。「3月末で退職/4月からは新しい職場で働く/年休を消化するので最終出社日は今月22日」という内容であった。翌日の午後、面談した。ちょうど世の中の皆さんが男子フィギュアスケートに釘づけの時間である。なぜこんなくだらない話のために、世界初4回転半への挑戦を見届けることができないのか。

質問してもいないのに退職理由を一方的に告げられた。「やっぱり待遇面が一番の理由ですね。もう少し自分の力と経験を評価してもらいたかったです。手取りとして最低自分の年齢に3万円を乗じた金額はもらえないと…。そして、モチベーションの低下が一番の理由ですね。これからも食品業界で生きていけるのかと考えると…。もうひとつ、コロナで自分の思うような営業活動ができなくなったのが一番の理由ですね」という調子で何が一番の理由なのかわからなかったが、「みんな一番なんだよー」というゆとり教育の成果が言葉から感じられた。きっつー。僕は理由を聞いただけで何も言わなかった。「止めないんですか?」と質問された。率直に「止めないよ。だって次、決まっているんでしょ」と返した。「部長はドライですね」と言うのをあえて聞き流していると「こういうときは形式的にでも止めたり、惜しいと言ったりするものですよ」と助言してくれた。「形式的に言ってもいいけど聞きたい?」「いや…いいです形だけでは意味が…」どっちなんだ。

彼は「これからはグーグルやアップルのような最先端の技術と知見の集まる会社が勝ちます。アマゾンやフェイスブックが世界を支配しているんですよ。だから私もそちら方面で力を発揮したいのです」と豪語した。「GAFAで働くの?」と興味はないが話をあわせると「部長、ガーファはもうありませんよ」と彼は笑った。どういうことだ。当惑する僕に彼は「部長はご存知ないと思いますが、フェイスブックは社名をメタに変更したので今はGAMAです。私のなかではガーマです」と言い切った。「ガーファで働くの?」「いいえ。ガーマにはまだ手が届きません」そこまで話を振った彼が4月から働く会社が、官公庁の入札案件中心の配管会社であった。ガーマと真逆ではないか。メタメタやんけ。能力的には大きな問題はないが、彼の過激な言動と、空気を読むのに長けているつもりでまったく読めていない資質によって、社内からクレームを受けた立場からいうとプラスマイナスゼロ退職であった。引継ぎと最終出社日等を決めて話合いは終わった。そこに思い出話はなかった。

スマホをみると男子フィギュアは最終滑走者ネイサン・チェンだった。部下氏は僕をツイッター初心者だとなぜか思い込んでいて、SNSマスター的な立場からこれまでも余計なアドバイスをしてくれていた。有益なツイート。お返しファボ。フォロワー数をフォロー数より多くしておくこと。3桁フォロワーになると世界が広がる。アニメアイコンの中高年男性の名がフォローリストにいるとフォローを敬遠されるから気をつける。等々、役に立たない助言ばかりであった。「部長フォロワー数はいくつになりました」ときかれた。面倒くささから「39かな(3万9千)」といった。彼は小馬鹿にしたように「先月は38でしたから1UPですね。その調子でいけば5年で3桁までいけますね。3桁になるとビジネスの可能性が広がりますよ。自分がそうですから」と言った。彼の目にはGAMAが映っているのかもしれない。かつて彼は4桁フォロワーは神だと言った。貴様は神を越えた存在を目の当たりにしているのだ。この無駄な会話から解放されると思うと彼の退職には価値があった。

彼は「部長、最後なので大事なことを教えてさしあげます。それは【トレンドをみて呟いてはいけない】です。トレンドはビッグウエーブなので部長のような二桁ツイッターが乗り込んでも呑まれるだけです。今、この瞬間つぶやいてはいけないツイートがわかりますか」「わからない」「『ネイサン・チェンすごい』です。トレンドにあわせて薄口で内容がなく世の中に媚びたツイートをしない。これだけ気を付ければ3桁フォロワーは近いですよ。5年後に会いましょう。お世話になりました」。もういやだ。(所要時間20分)

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