Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

価値観の多様性が叫ばれる時代に自分の価値観を妻に押し付けた。

今年の8月で結婚12年になるが、奥様の価値観をまったく受け入れられないでいる。価値観の違いが顕著にあらわれるのは金銭感覚だ。彼女の金銭感覚が理解できない。「老後に備えて金を貯める」をスローガンに緊縮財政を敷きながら、僕の1か月分のこづかいよりもはるかに高額な化粧水を買い続けている。理解できない。平和主義者の僕にできることは「化粧水は大事だよねー」と心で泣きながら化粧水の箱に記載された成分を確認することしかなかった。彼女も僕の価値観、金銭感覚が分かっていない。たとえばガンプラ。「ガンダムエアリアル」と「ガンダムルブリス」の違いを彼女に説明しても理解できなかった。僕が毎晩ハードに利用している海外のエロティックな動画サービスの必要性もわからないだろう(今、僕はクレジットの利用明細(海外)を精査されるのを恐れている)。

より深刻なのはアイテムが被ることの多い生活必需品だ。歯ブラシ。僕は神奈川県下に展開しているドラッグストア「クリエイト」で販売されている税込64円の商品を使っている。ブラシのタイプは願いを込めて「かため」。何の願いなのかは各自のご想像にお任せする。歯磨き粉で歯が磨ける、優れモノだ。一方、奥様は千円近くもする高級歯ブラシを使っている。おそろしくて確認するのを怠っているが複数のタイプを使い分けているような気がしている。「価値のあるものを美しく磨き上げるためには相応の投資が必要なの」と真顔で言われた。64円の歯ブラシの20倍の性能があるとは思えない。彼女は「私の歯は高級歯ブラシにふさわしい」というステイタスを買っている。くだらない価値観だ。僕には消耗品の歯ブラシに高級品を使う金銭感覚が理解できない。彼女のロジックだと、僕の歯には64円の価値しかないということになる。僕の歯は64円かい?指摘すると彼女は「そのとおりよ」と嘲笑した。深く傷ついた僕の魂を慰めてくれるのはエロティックな動画サービス(海外)だけである。国産のモザイク越しサービスでは癒せない深い傷だ。昨今の「多様性を認めよう。みんな違ってみんなイイね!」社会においては、彼女の価値観を認めつつ受け入れることが求められる。だが一人の社会を構成する男として、彼女からこづかいを限界まで削減され、64円の歯ブラシで歯磨きをした直後に「口がクサくない?本当に磨いた?」などと言葉の暴力を受けている一方で、高級化粧水を全身に浴び千円の歯ブラシで己を磨いている彼女を受け入れることなど出来ない。器の小さい男と嘲笑ってくれ。「パートナーがキレイだと嬉しいでしょ?」と言われても1ミリも賛同できない心の貧しい男だと。

絶望の淵にいた僕に救済のときが訪れた。救世主の名は「値上げ」。昨年から食品をはじめとした生活必需品が軒並み値上げになっている。食品をはじめ生活必需品は軒並み値上げ。子供がいない僕ら夫婦は老後に備えて貯金をしなければならない。そのための緊縮財政。朝の食卓で僕は言った。千円の歯ブラシなど言語道断だと。「キミも買い物を見直さなければならないね。僕に金銭感覚を合わせてもらうしかない。月1万円生活。贅沢は敵だよ」彼女は「そうね。でもあなたにかけた生命保険の掛け金は下げたくない」と答えた。二人で手を取りあうことなく別々にドラッグストア「クリエイト」へ出かけた。多様性を認められず、他人の価値観を受け入れられない、器の小さい僕は、ストーカーのごとく生理用品コーナーの影から彼女の買い物を観察していた。彼女は歯ブラシコーナーで足を止めた。少し考える素振りをしたあとで、64円の歯ブラシを2本、手に取ってカゴに入れた。もちろん「かため」。僕の大勝利の瞬間だった。彼女は僕の価値観、金銭感覚に合わせたのだ。帰宅してから彼女に「キミも僕と同じ歯ブラシを使うことにしたのだね。やっとわかってくれたか!」と感動を伝えると「そうね。モノにはその価格にふさわしい使い方があるのよ」と彼女は言い、その歯ブラシで汚い便器を磨き始めたのです。きっつー。(所要時間22分)