私事ですが入院しました。人情紙風船な現代社会です。心配してくれる人はいないと思いますけれども、2023年6月16日金曜日の夜、個室でひとりやることもなく暇を持て余しているので経緯を説明いたします。
別室で就寝している奥様からたびたび「イビキがうるさい」というクレームを受けてきました。私が就寝している別室から深夜に、「はあ…はあ…」「グガー!グガー!」大きく分類すると2種類の音が聞こえてくるというのです。「はあ…はあ…」については心当たりがありましたが、「グガー!グガー!」のような騒音については自覚がありません。彼女の言葉を信じるならば枕元で道路工事をしているような激しい音だというのです。慢性的な口臭に加え、口からの騒音発生が真実なら公害対策をしないわけにはいきません。私は、マウスピース、鼻リング、鼻拡張テープ、口テープ、横向き寝枕、レロレロ舌体操…市井でイビキに良いとされるものを試してみました。しかし、問題は解決しませんでした。そしてついに先日「イビキは病気につながるんだよ。気を付けて。一度検査をしてみてよ」と奥様から忠告されるに至ったのです。
真剣に心配してくれている様子でしたので奥様のためにいびき外来を受診、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあると診断され、簡易検査を受けました。簡易検査は自宅で就寝中に行うものです。その検査で無呼吸状態が一定の基準を超えたら、CPAP(シーパップ)という酸素ボンベのような機器を処方されるという説明を受けました。「シーパップで無呼吸が改善されればイビキもおさまるよ」と医者から受けた説明をそのまま奥様にしました。すると彼女は「シーパップね。よかった…これで病気にならないで済むわね」と心の底から安心しているように見えました。
簡易検査の結果が出ました。「睡眠時に無呼吸状態は起こっているが一定の回数に達していない」つまり「重度の睡眠時無呼吸症候群ではない」というものでした。先生も「重症ではないから経過を見守りましょう」と言ってくれたように良い結果だと思いました。奥様に伝えました。「よかったー病気ではなかったのだねー心配して損したー」という反応を予想しておりましたが、現実は「マジで?つまりシーパップの話はなくなったってこと?不気味なレロレロ体操をこれからも見せられるの?嘘?マジ?キミのクッソうるさいイビキがあたしの病気につながるんだよ。なんで気合いれて息を止めないの。絶対にシーパップは無理なの?ザッケンナコラー!」というビーバップのヤンキーのような口調でまくし立てる拒絶反応でした。きっつー。
彼女が心配していたのは僕のイビキが心不全や急性心筋梗塞、脳梗塞といった病気につながることではなく、僕のイビキで彼女自身が病気になってしまうことでした。要するに僕の認識は「イビキ<睡眠時無呼吸症候群」でしたが、彼女の認識は「イビキ(大音量)>睡眠時無呼吸症候群」だったのです。極論をいえば睡眠時無呼吸症候群が重症であってもイビキがなくなればよいのです。そう考えてみるとイビキの元を断てばいいような気がしますね。比較的良い検査結果で非難されるなんて…控え目にいって地獄です。
このままでは埒があきません。それに簡易検査は精度が低いため、病のサインを見逃しているかもしれません。私は、いびき外来で事情を説明し、精密検査を受けられること、精密検査で無呼吸状態が一定の基準を越えたらシーパップを処方できることを教えられました。奥様の強い要望もあり、光の速さで紹介してもらった大きな病院の無呼吸外来で精密な検査を受けるために、今、僕はこんな姿になっています。
『機動戦士ガンダム』の強化人間になった気分です。看護婦さんからはセンサーが外れないよう注意してもらえれば何をしても自由と言われております。本当にナニをしてもいいのでしょうか。「寝ている間は出来るだけ呼吸を止めてよ」という奥様から与えられたミッション・インポッシブルに今から挑みます。就寝時間(ミッション開始時刻)は21時です。成功ならシーパップ、失敗ならビーバップ。明日はどっちだ。それでは皆さん、よい週末を(所要時間20分)