Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

ロシアンルーレット式人事異動の功罪について

各部署を点々としたのちに営業部に異動してきた50代後半年上の部下の取り扱いに苦労している。営業部門は、他部門で失格の烙印をおされた人が送られてくることがよくある。「1万分の1の確率で営業の適性があるかも~」という謎理論で送られてくる。稼働している部門で実損を出すよりは営業なら本人のノルマ未達で終わるから良いという考え方がその根底にある。だが当該部下氏は違う。前職で長年営業職をやっていた経歴があるので、それなりに戦力になると期待があった…。のではなく、適性を見るという名目でロシアンルーレット式に異動を行い、前回は営業部を管轄する上層部が当たりを引いていたことが最近判明している。ひでえ。人を何だと思っているのか。このサイコパス老害が権力をもっている会社上層部のなかで、せめて僕だけは部下氏を一人の人間として扱いたい。そう思った。

先日、当該部下氏の企画提案書の一部を手伝った。食品会社なので調理・盛り付けされた料理を撮影した画像のストックがある。膨大な素材からイイものを選んで提案書に使えばいい。それだけの仕事だ。以前僕が作成した提案書のフォーマット(プレゼンで評価を得ていた)があったのでそれを使うことにした。画像ストックからいいものを選んで、原案を作成した。それから部下氏に「僕が選んだ写真を入れておきました。真面目に選んで作ったので問題はないかと思うけれども、この案件はあなたが窓口だから、使う素材についてはあなたが選び直してください。納得のいく提案営業にしてください」といって原案をわたした。
パワポで数枚の簡単な資料。真面目にじっくり目を通しても数分で見終わってしまう。当該部下氏はコンマ数秒で確認を終えると「部長のセレクトした写真いまいちなので、私の方で差し替えておきますね」と言った。自信満々であった。「部長にあこがれるのはやめました」オオタニサンの真似までかましてくれた。きっつー。

彼とて客と折衝をしてきた営業マンのはしくれだ。その営業マンが僕の写真では相手に届かないというならその判断と感性に従うほかない。僕もそうやって生きてきた。活かされてきた。部長席からデスクに戻った彼の仕事ぶりを観察していた。《こりゃないわ》とでもいうふうに顔をしかめたり、《全然ダメ》とでもいうように首を左右に振っていた。僕のセレクトした画像にエア・ダメ出ししていた。

すると、部下氏の動きが完全に静止した。マウスに手をかけたまま1分ほど完全に止まっていた。死んだかも。死ぬのは別にかまわないが、労災の2文字と監督責任の4字熟語がうっすらと頭に浮かんだ。声をかけた。反応した当該部下氏の言葉に僕は絶望した。「どうやって画像を挿入すればいいのですか。やり方を教えてくれればすぐにできますから」嘘…だろ…。2023年までどうやって生きてきたのだろう。僕がレクチャーすると「あーはいはい。簡単ですね。これなら楽勝です」と彼は言った。

一時間後。出来上がった資料は僕の出した原案そのままだった。画像挿入はできなかったのだ。本当にどうやって生きてきたのだろう。「部長がつくったものが最高だったのでそのままにしました」と部下氏。あんたは、いつもそれな。あんた、僕の選んだ画像がいまいちとはっきり言ってましたよ。憧れるのはやめたんじゃねえのかよ。いろいろな感情を押し殺して「まあ、僕がつくったものも悪くはないけどね。君はそれでいいの?提案営業で担当として満足のいかないものを出すことになるんですよ」と忠告すると「まったく問題ありません。顧客ファーストですから」と言い切った。自分ファーストの言い間違いだろう。

おそらく、部下氏は社会に出て40年間弱、善良な同僚に恵まれ続けたのではないだろうか。仲間が窮地に陥っていたら普通は助けるものだ。そして普通は感謝して次は迷惑はかけないと決意するものだ。迷惑をかけ続けると見放される。ところが部下氏には次に面倒をみてもらえる人があらわれ続けてきたのだ。

資料は「非常に良くできていてわかりやすい」という評価を受けた。僕は窓口になっている部下氏から、その評価を聞かされた。「私が作成した資料が高評価を受けました。これはきちんと査定に入れてくださいね」と部下氏は誇っていた。んー。いろいろおかしいなー。

「楽な方向に逃げる」「何がわからないかがわからない」「話を聞けない」「報告が不正確」「〆切を守れない」「「若いころ(バブル全盛)は何もしなくても仕事が取れた」が口癖」、部下氏の特徴をまとめるとこんなところである。きっつー。だが、僕の27年間のサラリーマンライフでは、もっと酷い人が数人いた。だから彼は最低ではない。ただ、部下氏はダントツで、他人から助けてもらった記憶を改ざんして自分のものにする能力に長けている。悪気がまったくないから困る。一緒に働く人間の心が壊れるだけだ。もう無理。

本日で異動から半年経過。会社上層部に部下氏が営業の適性に欠けている旨を伝え、彼の適性にあった部署に異動させた方が彼のためだと思いますと伝えた。上層部の人事担当は「返品は認めない。人間をモノ扱いするのは許さない。そういうなら彼を持っていける部署をあげてみたまえ」と人間モノ扱い発言を続けるので「人事」と答えた。「理由は?」「人事しか残っていないからです」というやりとりをしているうちに周囲から「次は人事だ」「我々は一度は引き受けている」という声があがったので部下氏は人事部に決定。ロシアンルーレット式人事異動こわすぎるけどこれはこれで公平なのかもしれない。(所要時間35分)