Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

パパになりました。

私事ですが、先月、パパになりました。「ありがとう」「おめでとう」…祝福の前に話を聞いてほしい。パパといっても父ではないのだ。パパ活のパパである。P活のPである。僕がめでたくパパになれたのは、ひとえに「株式会社はてな」の不義理のおかげである。心の底から感謝している。きっかけは「はてなブログ」への記事有料機能の実装であった。

記事の有料販売をはてなブログではじめよう! 人気ブロガーが書く有料記事の活用例も多数ご紹介 - はてなブログ

このムーブは素晴らしい。遅すぎたくらいだ。だが、皆さんもご存じのとおり、この新機能を紹介するアンバサダー的な立場の有力ブロガーに僕は選ばれていない。声すらかけられていない。2003年からはてなを使い続け、noteにも浮気せず、企画で声をかけられたら「いざ鎌倉」の勢いで参加し、ほめられもせず、20年間、ひたすらダイアリーとブログを書き続けてきた僕のプライドは踏みにじられた。この屈辱は、はてなブログの新機能が目の敵にしていると想定されるnoteへ移籍することでしか晴らせないと考えた。怨念を抱えてnoteを確認すると文学賞的なイベントの真っ最中であった。note創作大賞(創作大賞|note(ノート))。7月17日〆切。このイベントに小説で参加して受賞し、はてなにさようならを告げれば、大いなる復讐は完結する。

とはいえ、時間的な猶予はなく、書きかけの小説で参加するしかなかった。手もとにあったのは、パパ活をテーマにした小説だった。1年前に勢いで書き始めて投げ出したブツだ。再読して唖然とした。リアリティがないのだ。《40代のうだつのあがらない中間管理職がパパ活でモテにモテてわらしべ長者のごとく立身し六本木ヒルズのオフィスで酒池肉林生活を送るようになる》そんな妄想で賞レースに参加するほど僕は正気を失ってはいない。どうすればリアリティを得られるのか?僕は尊敬するヘミングウェイのように行動派になることを決意した。ヘミングウエイがスペイン内線に参加したように、パパ活戦線に参加するのである。Twitter改めXでP活専用の裏・アカを作成することにした。メールアドレスが求められた。本気を見せるためにezweb.ne.jpの携帯キャリアメールで登録。そして僕は、#の後ろに広がるパパ活、P活、パパ募集の海へこぎ出したのである。

僕はPになるつもりは一切なかった。大人の事情でアルファベットばかりで恐縮であるが、P活女子とPするPになる気持ちはなかった。小説にリアリティを付与するために当事者の話を聞きたかったのだ。そもそも、その頃の僕はCPAP治療を開始してQOL回復の道をヨチヨチ歩きを始めたばかりの段階で、まだPがPとPできるほどPしない状態だったのである。PPPろくなもんじゃねえ。

活動を始めて驚いたのは、女子たちが年齢や居住地や希望などを明らかにしていたことだ。元Twitter現Xで検索すればすぐに対象を見つけられてしまった。僕は生活圏がほぼ同じである20代女性「さな」さんにDMを送った。プロフになぜか友人とのツーショット写真を使っていたこと、「15548B22」という意味深な文字列が並んでいたこと、等々気になる要素はあった。だがそれでも「さな」さんへDMを送ったのは、困っているアッピールが凄まじかったので速攻で対応をしてもらえると踏んだからである。創作大賞の締め切りは迫っていた。時間が惜しかったのだ。

固定されたツイートには、大人、プチ、経費別、年齢気にない、DMで条件を決めたい、と記載されていた。断片的で意味が分からない。しかしいちいち調べている時間はなかった。僕は簡単なプロフィールを送った。《39才。社長。趣味サーフィン》。10歳のサバは誤差で許される範疇であるし、会社勤めが長く、ネットサーフィンが趣味だから嘘ではない。数分後。「さな」さんは「大人ですか」と質問してきたので、年齢を教えているのに何を当たり前のことを質問するのだろう?こいつまさかBOTか?と疑いつつ「大人です」と返した。すると次は「無しですか?」なるほど、こういう言い回しで行為の有無を尋ねてきているのだと鋭い洞察力から見抜いて、行為をしない、話を聞きたいだけなのだ、という意味を込めて「無しです」と返答。すると何ということでしょう、「さな」さんは法外な、具体的には僕の4か月分のこづかいの金額を求めてきたのである。無しなのに。「何だこりゃ」思わず松田優作のモノマネが出てしまう。僕の頭のなかに「美人局」の3文字が浮かんだ…。ここで交渉を打ち切ったら怖い人たちに拉致られて、最悪、北海道の例の事件のように頭と胴体が切り離される事態に巻き込まれる…。はっきりと意志を表明して撤退することにした。

「話を聞きたかっただけですが、どうやらミスマッチのようなのでこのへんで」「今どこにいますか」「F沢駅です」「分かりました。直接会いましょう。今からF沢駅に向かいます」「来られても困ります」「困っているのは私です」 小娘さなはクレジットカードの返済で困っているという話を執拗に始めた。知らんがな。

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「いや、やめておきましょう。僕が悪かった」「悪かったと思うならお金をください」「何で」「とにかく今からF沢に向かいますから13時に着きます」「来ないでいいです」「お金ください。困ってるんです」

さなはやってくることになった。面倒くさいことになった。厄介な人間を釣りあげてしまった。そういや奥様は「和製劣化版ジョン・マクレーン」「変人ホイホイ」と僕を評していたな。その評価は正しかったな。すると「さな」のバカから「ごめんなさい。化粧していたら送れちゃって14時近くになってしまいます」というメッセージ。バカなのか。無理すぎる。「じゃあ。帰ります。夕食の準備と6時からコナン君を見なければいけないので」「今日お金がもらえなければ死にます」どうぞ。お逝きなさい。「帰ります。予定があるのです」「この履歴を残したまま私に何かあったらあなたの問題になりますよ」なんでだよ「いや、キミが勝手に向かってきているだけだから」「お願いだから」「わかりました。半まで待ちます。それ以上は無理です」と譲歩した。会ったら喫茶店で3分話をして謝礼を置いて逃げよう。

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そう思っていたら、突然、さなは「ふざけんなよ。何であんたに時間を決められなきゃいけないんだよ。あー病む。マジで病む」と言い出した。不安定すぎる。それからは「タクシーで行ってカネかかってんのに」とか「笑」とか「待っててもらってありがとう」とか「なんでクレジットカードの支払いに困っているんだよ」とか「いい縁に恵まれて私は幸せ」とか「病む。病む。病む」などとメッセージでアップダウンを繰り返した。怖すぎる。命の危険を感じた僕は「すみません。やめておきます。怖い」とメッセージして逃げることにした。最後にさなは「あんたのアカウント晒すからな。P活おやじ死ね!」という素敵な言葉をプレゼントしてくれた。僕は速攻でアカウントを削除した。

こうして僕は自他ともに認めるパパになったのである。吾輩はパパである。パパだからパパなのだ。そして気がついた。こんなことをしているから、僕はアンバサダー的な立場の有名ブロガーに株式会社はてなから選ばれなかったのだ、と。期待の機能のスタートで、アンバサダーに指名した人間で「パパ活はじめました」という最低お下劣な記事を出してきたら僕ならキレる。なおインタビューにしくじったためにP活小説は未完のままだ。こうしてnoteへの逃亡もはてなへの復讐も果たせず、またここでブログを書き続ける地獄の人生が続くのだ。(所要時間40分)