Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

元給食営業マンが名古屋市発注中学校給食事業入札で起きた談合のヤバさを解説してみた。

news.yahoo.co.jp

名古屋市発注スクールランチで談合か 公取委、給食業者を行政処分へ(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

僕は元給食の営業マン。名古屋市が発注している中学校給食の入札で、入札に参加した給食会社6社が談合を繰り返したとして、約3億9000万円の課徴金納付命令が出された。6社は葉隠勇進(東京)、魚国総本社(大阪)、日本ゼネラルフード、松浦商店、ミツオ、メーキュー(いずれも愛知)、コンパスグループ・ジャパン(東京)。

ウチは今回の談合には関わっていない。だが、昨年まで2年間、東海営業所の所長代理を給与据え置きで兼務させられ、名古屋の給食案件にも参入した過去があるので他人事とは思えない。我々も名古屋のスクールランチ(名古屋市:中学校スクールランチ(暮らしの情報))にも参入しようと検討したが、以下に書いてある事情で断念した。断念して良かった。

どれくらいヤバいのか

まず事件のヤバさについて確認しよう。

今回6社に課せられる課徴金3億9000万円だ。独占禁止法によれば、不正な取引制限は10%(のはず)(課徴金制度 | 公正取引委員会)。 詳細はわからないが30億円前後規模の不正になる。長年給食の営業をやっているが、これだけの規模の不正は初めてだ。これまで学校給食の入札に参加するたびに何回もモヤモヤしたけれども、そのモヤモヤを煮詰めたものが今回の事件のように僕には見える。

何が行われてきたかやばいところあげてみよう。最近は電子入札で情報公開されていて便利だ。(https://www.chotatsu.city.nagoya.jp/ejpkg/EjPPIj 以下の画像はここのスクショ)。画像を見て欲しい。ここ最近のスクールランチに関する入札結果だ。

落札者にはニュースであげられていた社名が並んでいる。クリックすると個別の詳細が見られるけれど毎年ほぼ同じ会社が並んでいる。他の年度も同じような感じだった。

特に香ばしい2例を見てくれ

特に香ばしいのが次にあげる2例だ。まず1つ目。「令和元年度/中学校スクールランチ調理等業務委託(熱田区)入札結果」を見てほしい。この入札はメーキュー株式会社が55,440,000円で落札している。着目すべきは上位4社の入札金額だ。

1位メーキュー(55,440,000円)と2位魚国総本社(55,572,000円)の差が132,000円。1位と3位の差が361,000円。1位と4位の間が500,000円。確かに大きい金額だ。だが年間5千万円超という巨額の委託費の1部として、また年間の金額として考えると、それほど大きな金額ではない。月額にするとわかりやすい。1位と2位の間の差132,000円を12ヶ月で割る。1万2000円だ。4位との差額でも月額だと41,666円。

営業担当として入札に参加したことが何回もあるが、これだけギリギリの数字で入札するのは至難の業だ。ましてや4社がギリギリの金額を入れるのは芸術点高すぎる。なぜ執行者は気が付かないのか。目が節穴なのだろうね。はっきりいえば落とそうとする会社の金額を知らないと狙えない差だ。まさかそんなことをする人がいるとは思わないけど、いたのですな。ビバ談合!

もう一つ香ばしいのがこちら。「令和元年度/中学校スクールランチ調理等業務委託(天白区)入札結果」。株式会社魚国総本社が落札している。落札額は108,009,000円だ。なんと1億円!ワオ!

オールスターキャストが入札に参加しているが、2回目の入札ではなぜか辞退続出。無事に決定。かなり不自然だ。まるでロシアの大統領の政敵が偶然バタバタと死んでいくようだ。例えば落札者の次点は年間312,000円差。月に直したら26,000円だ。1億円の仕事を26,000円差で辞退する営業マンは転職したほうがいい。まさか謎のパワーが働いているなんてね。真面目に参加する会社が不憫だ。

通常なら市場原理が働き、よろしくない企業は退場していくものだ。ところが今回は排他性によって、新たに参入する真面目な会社は排除されている。つか新規参入できないのだ。ビバ談合!

なぜこんなことが起きるのか

スクールランチは給食と言うよりは弁当のイメージに近い。セントラルキッチン(拠点)で調理工程を行い、各中学校に配達する。今回問題になった入札はその調理業務の民間委託案件だ。現受注業者から見ると拠点を維持することが最大の懸念事項になる。なぜならこの件のセントラルキッチンが学校給食に特化しているからだ。大規模な改修なしでは病院給食用へ転換することは難しい。規模面でも1日千食から数万食もの受注を失った場合、新たにその規模の顧客を獲得するのはほぼ不可能だろう。

つまり入札でしくじった場合、そのセントラルキッチン自体が死ぬ。そういう危機感が業者間にあってお互いに既得権益を守ろうねーという意識が働いた。これがまず1点目の要因。

もう1点。どういうわけか僕の手元にこの名古屋市が発注となっているスクールランチの入札書類一式がある。

f:id:Delete_All:20240227183807j:image

(令和5年度中村区のスクールランチ調理等業務委託関係の書類。年間委託料での入札が明記されている)

詳細は省くが募集要項・仕様書・契約書等々。今となっては無意味な理念や目的が書かれているけれども、注目すべきは入札公告の2番「入札参加資格」だ。引用する。

(9) 名古屋市内又は隣接する市町村に本社又は営業所を有すること。

(10)名古屋市内又は隣接市町村に調理施設ないし炊飯施設を有すること。

(11)過去5年間(平成30年4月1日以降)に、集団給食事業(委託者の調理場における 1回当たり合計 1,670食以上の提供がある場合に限る。)を継続して3年以上受託履行した実績を有する者であること。

まとめると名古屋市内に拠点(本店や営業所)があり、かつ市内にセントラルキッチンを持ち、相当な規模の給食事業実績があること、ちなみに1回当たり1670食と言うのは学校給食か超巨大病院レベルだ。参考までに7校2000数食規模の給食センターで19億円かかる。日本建設新聞社 » 工事費概算で19億円 東給食センター S造2階2459平方mで環境配慮(栃木市)

つまり新規参入する会社は名古屋市内に拠点と20億円以上かけてセントラルキッチンを作ったうえで入札に参加し、かつ談合の会社の包囲網を突破しなければならない。事実上無理だ。僕の会社は、このハードルの高さの前に断念せざるを得なかった。ウチの会社上層部は攻めの姿勢が大事だといって当初は前向きに考えていたけれども、ハエでもわかるように僕がリスクについて説明したら「もししくじったら誰の責任だ!」と責めの姿勢へ転換していた。バカだけど保身に長けていて助かる。「セントラルキッチンを作ってもし受注できなかったら…」と想像したら「恐ろしくてとてもとても参入できない」と考えるのが普通だろう。

学校給食という特性上、どんな会社が入ってもいいはずがない。実績は第一である。だが、そもそも新規参入する側から見れば、新たにセントラルキッチンを建設して取れるか取れないかわからない今回の入札に参加するのはリスクが高すぎる。こうして既に入ってる既存業者の閉鎖的な環境が出来上がる。絶望的なのは、学校給食の排他性は名古屋だけではなく全国共通のものだということだ。

以上のように、「既存業者たちのセントラルキッチンを持ってるがための危機感」と「新規業者が入れない排他的な環境」、この2点が今回の背景にあると思われる。参入する要件のハードルが高く、リスクも大きすぎるのだ。同じ給食会社にいた者として理解はできるけれども、同情はできない。死ねよと思う。

選定の仕方がおかしいのでは?

そもそも子供たちに提供する給食を数字だけで決めていることに問題がある。昨年は話題になったホーユーの倒産による学食の提供停止事案と根底は一緒だ。

delete-all.hatenablog.com

雑な仕事をしている。それにつきるのだ。子供たちの食事のことを考えるならば、競争入札と言う数字だけの選定方法ではなく、試食等の方法で時間をかけて選定するべきだろう。しかし…競合各社の担当営業がほぼ同じようなスレスレの金額で入札したり、2回目の入札に参加するのが、なぜか一社のみだったり、パッと見ただけでおかしなことが起きているのに誰も気が付かなかったの?

給食の入札案件には闇が深い。某原子力関係の団体が発注した食堂の入札ではなぜか発注者の担当者から前日に「明日の入札、貴社はこの金額で入札してください」と言う連絡が電話で入ったことがある。「電話では金額を間違えてしまいそうなので、メールで送ってください」と依頼したら断られた。なんでだろうね?痕跡が残るからかな?(^^)。今回の課徴金についてはÇ社がうまく立ち回ったなぁと言う感想しか残らない。

名古屋市立中「スクールランチ」で談合、公取委が6社に3億9000万円の課徴金を納付命令へ(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース《6社とともに公取委の立ち入り検査を受けた「コンパスグループ・ジャパン」(東京)は違反を事前に申告し、課徴金減免(リーニエンシー)制度でいずれの命令も免れる見通しだ。》

これ悪く言えば、今後、名古屋市の展開ではÇ社の1人勝ちなんじゃない?なんかキナ臭くなってけれど、セキュリティ上の問題で今回はここまでとしよう。あれ見たことのない番号の着信が…。(所要時間50分)

『面倒なことはChatGPTにやらせよう』を文系ゴリゴリおじさんが読んでみた。

『面倒なことはChatGPTにやらせよう』(カレーちゃん氏、からあげ氏著)を2回通読した。著者のひとり、からあげさんは、僕がキャラクターを認識できる数少ないブロガーだ(お会いしたことはない)。現在、データサイエンス研究者として大活躍している。なお、僕は勝手に彼をターミネーター2に出てくるサイバーダイン社の開発者ダイソンさんをイメージしている。人類の未来のために、凶悪なターミネーターを開発することのないことを祈るばかりである。僕はゴリゴリの文系の営業職の50歳のオッサンで、本書の推薦人である松尾教授とは真逆の人間である。もしかしたら本書のターゲットから外れている人物像かもしれない。そういう人物に本書がどう役に立つの?という視点でレビューになる。

本書を一語にたとえると「ブルドーザー」だ。ChatGPTへの抵抗感や不信感や偏見という壁をぶっ壊し、日常に即したツールとするまでの道を舗装するという意味だ。昨今、生成AIが大ブームである。数年前まで某感染症の感染者数をリアルタイムで報告していたテレビのワイドショーでも毎日のように「生成AIでこんなことができる!」「生成されたリアルな画像が現実と区別がつかない」などと内容のあるようでまったくないくだらない取り上げ方をしている。書店に立ち寄れば「ChatGPT」が表紙を飾る本を見かける。そんな世の中で生きている僕は、ガンマgtpだけでもヤバいのに、そのうえ生成AIを使わないとヤバいことになりそうだという危機感を持つようになった。

不安にかられて僕も著名人(あえて名は出さない)またはそのゴーストライターが執筆した「生成AIを使わないと損をする」「生成AIで世界はこう変わる」という本を何冊か読んだ。危機感を煽られただけで途中で読むのをやめてしまった。大変もやもやした。くだらないのが「AIに仕事を奪われる!」「こんな仕事は滅びる!」と繰り返される内容だ。人類が科学を発展させてきたのは、言い換えれば過酷な労働から決別するためである。技術の発展でなくなる仕事があるのはこれまでの歴史と一緒でしょ?仕事の在り方が変わるだけだ。

「ChatGPTとどう向き合えばいいの?」「ChatGPTを前に文系オジサンは最初に何をすればいいの?」本書はそういった不安を解消する内容となっている。かなりの頁数を割いて、どういった命令を与えれば、こういう答えが返ってくる、うまくいかないときはこうやってみてという実例が掲載されている。データを加工してグラフ作成やパワポの資料作成、顧客別の販促メールの作成法、簡単なブラウザアプリの作り方まで、ゴリゴリ文系の僕でもわかるくらいの、これ以上分かりやすく書けるのか?というレベルまで視点を下げてくれている。

<めちゃわかりやすい実例>

f:id:Delete_All:20240225180930j:image

f:id:Delete_All:20240225180936j:image

生成AIで世界はこう変わる系の書籍の大半は「AIすげー」「やべー」で思考停止してブラックボックスのように扱っているように見える。その方が危機感を煽れるからだ。けれども、本書はChatGPTの優秀さや便利さを嚙み砕いて、こうやって使うことで身近なツールになるよ、という優しい視点で書かれている。多くの文系中年おじさんは、生成AIはヤバいよ、といわれて、そっかヤバいんだな、で止まっている人間が多い。なぜか?それは「何をすればいいのか」「最初の一歩でどうすればいいのか」そして「それをすることで何が起こるのか」をわかりやすく解説する教材がなかったからだ。

そしてプライドの高い文系中年おじさんはChatGPTや生成AIを「質問を投げかけると人間っぽい答えをしてくれるツール」「文章から現実顔負けの画像を作成するツール」という限定・矮小化されたイメージで固定させてしまう。何を隠そう僕もその一人だった。だが本書を読んで、それらはChatGPTの一部にすぎないことがよくわかった。実際にはもっと自由度と汎用性の高い可能性を秘めたツールであることを《プロンプトと結果とうまくいかない場合のコツ》の繰り返しの実例で示している。素晴らしい。

タイトルにあるように今抱えている面倒なことを頭に浮かべながら読むとより効果的だろう。僕の場合、ほぼ同じような話に終始する会社上層部との打合せが死ぬほど面倒くさい。上層部が死んでくれたらいいのにと毎週思っているくらいだ。打合せ自体は変わり映えのしないものだが、その場に用意しなければならない資料を毎回作らなければならないのが面倒くさいのだ。死んでくれと思う。

だが、本書で紹介されているパワポ資料の作成法なら、同じデータからでも違うものが簡単に作成できるようになる。どんな内容を作ればいいのかという悩みからも解放される。「どんなの出来る?」とChatGPTへ尋ねるだけでいい(記述法はコツがあるけれども本書に紹介されている)。提案された候補から選んで実行すればよい。面倒クサさとはおさらばである。最高だ。

本書をガイドにChatGPTをとりあえず使ってみて、身の回りにある、クッソ面倒くさいことをChatGPTに投げてしまおう。それで浮いた時間と労力を別のまだデータが出そろっていない新しい仕事の企画作業や趣味や休憩に投資すれば、QOL向上につなげられるだろう。

『面倒なことはChatGPTにやらせよう』、身もふたもないタイトルだけれども、これ以上僕ら人間とChatGPTとの付き合い方を端的にあらわしている言葉はないだろう。面倒なことをAIにやらせる、そこにいたるまでの少しだけ面倒な道のりを平坦な道に整地してくれているのが本書である。なお、最新アプデに対応している。今まさに読むべき本だ(所要時間45分)

政治家は裏金つくってんのに、行儀よく確定申告なんて出来やしなかった。

僕はフミコフミオ。先ほどからイータックス(https://www.e-tax.nta.go.jp/)で確定申告作業をはじめた小市民である。ところがhttps://www.e-tax.nta.go.jp/において「裏金」記入欄が見つからず作業が頓挫したため、気持ちを落ち着かせるために、こうしてブログを書いている。確定申告作業の進捗率は30%程度だろうか。道は長い。参考までにあげておくと、岸田フミオ内閣の最新支持率は14%である。岸田内閣の支持率14% 自民党の支持率も16%に下落 - 産経ニュース

確定申告のために税務署を訪れた人たちが「裏金政治家からきちんと税金を徴収しろ」「政治家から徴収するまで納税しない」と文句を言っているというニュースを見た。スタッフジャンパーを着ているアルバイトの若者へ、イオンで購入したジャンパーをパリっと着こなしたオジサンが文句を言う、いわば世代間ジャンパー対決だ。現在の政治に対する怒りはごもっともである。だが、政治家の納税と自身の納税は別問題である。残念ながらhttps://www.e-tax.nta.go.jp/で申告できるのに紙に慣れているという理屈でわざわざ税務署に足を運んでいるのは頭脳が硬直化している老人およびその予備軍であるためそのことが理解できない。確定申告は面倒だ。細かい。イライラは募る。そのうえで自民党の議員がアホなことをやっている。ムカつく。文句のひとつでも言いたくなる。その気持ちはわかる。無視できない声だ。あるニュースによれば「税務署へ持参して提出(紙)」で確定申告をする人が24.9%いるらしいからだ。無視できない。なお、関係ないが、岸田フミオ内閣の最新の支持率は14%である。

はっきりいってしまおう。自民党裏金問題に憤って「政治家から税金を徴収してからにしろ」「納税ボイコット」と訴えるのは理性に欠けている。あえていおう馬鹿であると。馬鹿な政治家のために納税を怠って追徴課税を受けるのは実にくだらない。馬鹿な不正をする政治家と同じレベルになっていいのですか?。よく考えてほしい。つか、よく考えなくても、我々の納税/確定申告と自民党裏金問題はまったく別の問題である。感情的になってそれを混同してはいけない。怒りはわかる。ムカつくのもごもっとも。自民党裏金問題で大炎上しているところに放り込まれた「超訳)自民党議員の裏金問題は、忘れやすい日本人の特性をフル活用して、内々激甘対応できちんとやってきますので、下々の日本国民の皆さまのおかれましては法令に基づいて確定申告&納税をきちんとしてくださいね。裏金は選挙で選ばれた国会議員の特権です。やらないと追徴課税ですよ」という岸田フミオ首相のコメントはニトログリセリン級だ。支持率14%を誇る岸田フミオ首相は、フミオ界の風上に置けない男である。

岸田フミオさんが首相になったときのことを覚えているだろうか。記者会見だ。A6サイズの小さいノートを高く掲げ「聞く力」をアッピールしていた。ノートは書くものであるため、聴く力=聴力と何の関係性があるのか、そのときの僕には理解できなかったが、世の中、ネットの反応は概ね好評だったように見えた。今は、ノートをメガホンのような形状に丸めて音を聞く道具として活用するという意味だったと好意的に解釈している。つい先日も子育て支援だがなんだかのための月500円増税を「収入アップが見込まれるので増税にはあたらない」と答弁していた。500円はたいしたことがないという認識なのでしょうが、日々の昼飯代を1日300円台におさえている僕からみれば500円はファミチキが追加できるくらいの大金なのだ。ふざけてんのか。閑話休題。何が言いたいかと申し上げますと、岸田フミオさんは微妙に認識のズレた発言を繰り返す人なのである。だから、国民への納税訴えも、当たり前のことを申し上げているというだけなのである。そういう人に「裏金問題を解決しろ!」「納税ボイコット!」と訴えても、さらにイラっとする発言が生産されるだけだろうと予想する。

というわけで裏金問題に憤って「納税ボイコット」「政治家からきちんと徴収しろ」と確定申告タイミングで訴えても馬鹿をみるだけなのだ。それが、あえていおう馬鹿であると、の意味である。このような理屈を説くと、「そういう冷笑主義が日本をダメにした」とか「政治から逃げている」というようなことを言われる。違うのだ。攻撃の仕方が間違っているのだ。先述のとおり、裏金問題を解決しろ!政治家が納税するまで納税しないぞ!と訴えるのは期待値の14%くらいのダメージしか相手に与えられないと思われる。もっと壊滅的なダメージを与えて危機感を持たせるのだ。というわけでハクティビストのアノニマスさん!出番です。疑惑議員のPCのハック、オナシャス!霞が関と間違って霞ヶ浦を誤爆した恥ずかしい歴史を覚えているので今度はきちんとお願いしますよ。では僕はhttps://www.e-tax.nta.go.jp/に戻ります。これまで入力したものがパーになるのは嫌なのでhttps://www.e-tax.nta.go.jp/を攻撃するのはやめてね。

(所要時間25分)

単行本『ドラミちゃん』「しずちゃんの入浴オチ」はないけど最高でした。

単行本『ドラミちゃん』、最高だった。最初にいっておくと僕はドラえもんの熱心ファンではない。小学生の頃、コロコロコミックの連載を読み、大長編ドラえもんの特別連載を毎年心待ちにして、今も実家の本棚にはてんとう虫コミックが揃っている、その程度のファンだ。グッズを追い求めるとか聖地巡礼をするようなマニアではない。そんな僕でも単行本『ドラミちゃん』は最高の読書体験だった。ドラミちゃんワールドが1冊にまとまっているのがとても良かった。しかも240ページの大ボリューム。最高。

ドラミちゃんはF先生の変化球だ。ドラミちゃんというドラえもんとは性格の違うキャラクターを本来ドラえもんのいるポジションに配置して、物語に変化を与えている。アニメ版でよくある優等生なドラミちゃんがのび太の面倒をそつなくこなしてドラえもんが嫉妬するエピソードがその代表だ。マンネリ回避というよりは、たまに投げる変化球を楽しんでいたように見える。初期ドラミちゃんの、キャラが安定していないところも地味に見どころだ。

f:id:Delete_All:20240219235535j:image

(「ドラえもんの妹」設定に必要以上に説得力を持たせるビジュアル)

 

ドラミちゃんの話には2つのパターンがある。ドラえもんの物語の中にドラミちゃんが登場するパターンと、端からドラミちゃんが主役のパターンだ。ドラミ主役話を読んでいると、ドラえもんの原作を読んだことのない非国民の方が読んでも何ともいえない違和感を覚えるはずだ。低い感性の方でも読み進めているうちに、「これはドラえもんの世界じゃない!」と気づくだろう。少々ドラえもんに詳しいセンスある人のあいだでは常識なのだけれどドラミ主役話は、いわば、ドラえもんワールドのパラレルワールドなのである。

ドラミ主役話のいくつかは異なる連載誌に掲載されていたもので(特に『小学生ブック』に連載されていた回は後述のズル木が登場するぶんパラレルワールド感が強い)、修正をほどこしてドラえもん単行本に収録している。大人の事情により完全な修正がおこなわれなかったため、それが違和感に繋がっている(そのあたりの事情はこのサイトが詳しい→君はズル木を知っているか。ドラえもんマニアには常識、のび太郎とカバ田とみよちゃん:ムゲンホンダナ(本棚持ち歩き隊!!):SSブログ

f:id:Delete_All:20240219235609j:image

(ジェネリック・スネ夫、小さいジャイアン、違和感しかない一コマ。パラレル!)


のび太っぽい主人公は「のび太郎」、ジャイアン=「カバ田」、しずかちゃん=「みよちゃん」、スネ夫=「ズル木」である。のび太郎は見た目がのび太なので無修正、カバ田とみよちゃんは修正でドラえもん世界との整合性をはかっている。しずかちゃんに修正されたしずかちゃんそっくりなみよちゃんに、「みよちゃん」と呼ぶのび太っぽいのび太郎。うん。意味がわからない。でもそれが面白い。

f:id:Delete_All:20240219235628j:image

(この数コマだけでも哀しい…。そして突然登場の「みよちゃん」の名前。ここではズル木ではなくスネ夫だ。パラレル!)

 

それにしてもF先生はときどきいい加減なネーミングをするものだ。「のび太郎」って。天才の仕事だ。なお、ズル木については修正をあきらめて、スネ夫への修正がなされずにしれっとズル木で出ている。本書に収録された話でも、ズル木でいくかと思いきや、別の話ではスネ夫が出ていたりする。そしてズル木とスネ夫の共演はない。なおスネ夫はよく知っているキャラで憎めない面もあるのを僕らは知っているけれど、ズル木は登場回数が少なく良い面が描かれていないので単にズルい奴なのがいい。ズル木はズルくて嫌なやつ。そのままでわかりやすい。ジェネリック・スネ夫ことズル木の扱いがひどくて最高。

f:id:Delete_All:20240220004002j:image

(ただのズルい男、ズル木。ドラえもん正史から消された哀しいキャラだ)

 

このようにドラえもんの世界観とドラミちゃんの世界観とのあいだでときどき見られる整合性の取れてなさを一冊で楽しめるのが単行本『ドラミちゃん』の魅力だ。ドラえもん単行本に点在して収録されたために薄まっていた整合性の取れてなさが、ドラミちゃんでくくられているぶん特濃で味わえる。整合性を気にしない、ロックなスタンス。今なら生成AIで修正できてしまいそうだが、あえてその雑さを残しているのがいい。

f:id:Delete_All:20240219235723j:image

(パパかと思ったら、お前誰やねん。パラレル!)

 

あと、ドラミちゃんが女の子だからだろうね、しずかちゃんのお風呂オチが見られないのでその点について過剰に反応しそうなネットのとある層にもおすすめできる。なお、長期にわたって描かれた『ドラえもん』だがドラミちゃんの登場回は23回しかない(らしい)。思ったよりも少なく感じるのはドラミちゃんというキャラクターのインパクトが大きいからだろうね。その中でも「海底ハイキング」「ネッシーがくる」「ガンファイターのび太」は名エピソードなのでぜひ読んでほしい。なお、紙書籍にはドラミちゃんシールが付いてくるよ。(所要時間30分)

帰宅命令を出すのは「公共交通機関が止まったら」でいい。

先日(2024年2月5日)、関東地方に大雪が降った。職場がある神奈川県に大雪警報が出された。めずらしいことだ。積雪を警戒して朝から県内の有料道路は通行止めになっていたが、会社最寄り駅を経由する電車やバスといった公共交通機関は通常どおり運行。朝からSNS上では帰宅命令を出す企業の情報がぽちぽちと出始めていた。

午前10時半。僕の座る窓際席から降雪を確認。会社前の道路はうっすらと白くなりはじめていた。スタッドレス未装着車の走行は危険だ。会社上層部が会議室に集まり、対策会議を開き対応を検討しはじめた。降雪予報を受けて前日の夕方にも会議はひらかれていたが、「明日の様子を見て臨機応変に対応する」というどうしようもない結論に至っていた。こういう状況ならこういう動きをするという取り決めもなし。1時間弱の会議で何を話していたのだろうか?行き当たりばったりを臨機応変と超訳していてアカデミー出版もびっくりである。

12時。降雪は強くなるばかりで、数センチの積雪が認められた。もはや我々社員の興味は、帰宅命令を出す/出さないから帰宅命令を出すのは当然でいつ出すの?今でしょ問題になっていた。同時刻、上層部が3回目の対策会議を開催。会議は3分で終了。会議の長さがおっさんの不整脈のように不安定だ。結論は「高い関心をもって降雪の状況を注視していく」というものであった。平均60才オーバーの上層部が、横一列に並んで、高い関心をもってぼーっと窓の外を見ている光景は、薄気味悪く、「60才をこえたら自分もこうなってしまうのか」という将来への不安を覚えてしまう。

13時。降雪はさらに強くなるばかりであった。上層部が対策会議を開催。手帳を持たず手ぶらで談笑しながら会議室に入っていく老人たちの姿が不安と不快感を覚えた。「ゆーきやこんこ」という歌声が聞こえた気がした。まさかの幼児退行現象。幻聴であってほしい。

(19時頃の様子。雪はパラパラ降っていた)

13時40分。途中から会議への参加を要請された。これまでも指示を周知するため、在社中の部門長クラスが招かれることはあった。会議室では「公共交通機関が止まったら全社員に帰宅命令を出そう。会社に泊まったら光熱費がかかるし、せっかく備蓄していた非常食も消費してしまう。もったいない」と上層部が真顔で話し合っていた。聞き間違いを信じて確認したが、《公共交通機関が止まる前に》ではなく《止まった後に》であった。大雪のなか、会社を追い出されて、身動きもとれない。温かい本社と緊急時のために備蓄した食料があるのに、なぜ神奈川の市街地で雪中行軍をさせられなければならないのか。嫌がらせすぎるだろ。会社は我々を見放したーーー!

ブラック企業ぶりに目の前が真っ暗になりつつも反論した。「今、帰宅命令を出してはどうですか」。すると上層部は「今、帰宅命令を出せば、会社都合による休業となり、手当を払わなければならなくなる。しかし、電車が止まれば天災による休業となり、手当を払わなくてすむ。それが経営というものだよキミ」と答えた。安全配慮義務はいずこへ。

このような判断の裏には、過去の判断のしくじりがあった。数年前、巨大台風が関東に激突すると大騒ぎになったのを覚えていないだろうか。そのとき、我が上層部は我が身の安全を第一に考えた。そして「台風の中、出社したくない」という本音が露見するのを隠すため、木を隠すなら森の中とばかりに、激突予想日を終日休業として社員全員を自宅待機させたのである。巨大台風はそよ風レベルで終わった。その結果、会社都合休業とされ賃金を支払うことになり、当時の上層部内で責任の押し付け合いが起こったのである。以来、我が社上層部は災害への判断は《ギリギリでいつも生きていたいから》路線へと変わった。

結局、社員からの圧を気にした上層部は、18時定刻に合わせて帰宅命令を出した。無意味であった。なお雪は夜更けすぎに雨へと変わり、公共交通機関が止まることはなかった。こうして大雪における帰宅命令戦争は会社上層部の大勝利に終わったのである。翌日、上層部たちは「この地域で長年生きてきた経験からこの程度の雪では電車が止まることは絶対にないと読み切っていた」と自慢していた。上層部の判断に疑問を呈した僕は「帰宅命令を出す必要あったかね?」「キミの判断は甘すぎる」と事あるごとに嫌味を言われている。きっつー。(所要時間32分)